

ペトリコール
神野美紀
ぽつり
ぽつり
雨が落ちる
地面は
濡れるごとに
生きてきた道を懐かしむ
濡れる前には戻らない
戻れない
雨の降るように
人生は滲みていく
病める時も健やかなる時も
雨の滲みは広がって
違う雲から落ちる水滴と交わる
あなたはどうですか
水捌けはいかがですか
泥濘みましたか
おそるおそる問いながら
あなたの滲みにも混じりたい
嗅覚が一番記憶と
繋がりが深いんですよ
どこかの本で読んだ
雨が降り始めるたびに
懐かしさの中で
深みがあってもよさそうな
でも
薄っぺらであろう人生を
思い出す
今思えば
後悔は気付かぬ内側に
外側も気付かず駆けていた
ただ
それでも
自分としてしか生きられない
生まれ変わっても
きっと
何度雨が止んで
何度降り始めようとも
いつも
同じ匂いがするでしょう?
そんな
慈しみを感じるように
郷愁を満たすように
たとえどんな自分でも
そのままの心を愛したい